近年、飲食店における人手不足は深刻化しています。そんな中、外国人の雇用を積極的に行っている飲食店が多く存在しています。しかし外国人労働者を雇用する際に気をつけなければならないことがあります。
今回は、深夜酒提供飲食店で外国人労働者を雇用するにあたっての注意点を解説していきたいと思います。
ぜひ参考にしてみてください。
1.飲食店の外国人雇用状況
飲食業界が人手不足といわれている昨今、外国人を雇っている深夜酒類提供飲食店が少なくありません。真面目で勉強熱心の外国人が多いと言われていますが、ここでは先ず外国人労働者の雇用状況を見ていきたいと思います。

上の円グラフは飲食店において〔外国人スタッフを採用したことがあるか〕の調査です。「採用経験がある(48.7%)」、「採用経験がない(51.3%)」という結果となっています。
ほぼ同等数になりますが、引き続き今後外国人の採用を7割強の飲食店が前向き検討していきたいという回答でした。

上のグラフの〔外国人スタッフと勤務した飲食店の業態〕の問いでは「バー(24%)」、次いで「居酒屋・ダイニングバー(20%)」「和食店(20%)」という回答になりました。深夜営業をおこなっている業態の飲食店で働く外国人労働者が多くみられまでぃた。病院や介護施設などは未だ浸透していませんが、全体的に外国人を雇用しているのがわかりました。
外国人を雇うということは「文化や習慣、言葉などの違い」の不安がある反面、「人種の区別はしていない」「真面目で勤勉」という飲食店も多く存在しています。
インバウンドが増加しているなか、外国人客に対する言語やサービス対応などのため、ポジション的にも外国人労働者がいるということは大きな利点ではないでしょうか。
2.外国人雇用においての注意点

多くの外国人が日本で働いていますが、観光目的以外で外国人が日本で深夜営業をおこなっている飲食店で雇用するために気をつけなければならないことがあります。
2.1 在留資格の証明
飲食店で働く外国人は在留資格を取得していなければなりません。
先ず、外国人を雇用する場合、在留資格が深夜酒類提供飲食店での業務が適切であるかどうか確認します。
深夜酒類提供飲食店では、次の5つの資格条件いずれかを取得していなければなりません。
なお、この5つの資格をもっていれば店舗の経営者および管理者になることも可能です。
- 永住権
- 定住者
- 特別永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
▼在留資格を得ていなかったり、在留期間(日本での滞在期間)の有効期限が過ぎていると雇用はできません。
2.2 資格外活動許可の取得
在留資格には就業できないものもあり、「資格外活動許可」の有無を確認する必要があります。資格外活動許可とは、在留資格で認められている活動以外で「収入や報酬を受け取ることができる活動」を許可するものです。
例として、日本に来日した留学生が学費や生活費に補うためのバイトを始めることが「資格外活動許可」となります。
ただし、資格外活動許可で以下の活動は許可されていないので注意しましょう。
- 報酬、収入を目的としない活動
- 継続性のないスポットで働く活動
- 風俗営業(パチンコやキャバクラ、スナックなど)の活動
参考)引用➡出入国在留管理庁「資格外活動許可について」
2.3 風俗営業と深夜営業の勤務時間制限
外国人労働者が働く場合、日本人と同様に勤務時間の制限があります。
ただし在留資格の種類によって労働時間の制限が異なります。
■時間制限がある在留資格
資格外活動の許可を得ている「留学」「家族滞在」「特定活動」の一部、収入が発生するインターシップなど制限があります。
1週28時間(1日8時間まで)までの労働時間が制限されています。また、2社以上で働く場合も合計で1週間28時間以内に収めなければなりません。留学生は風営法が関わる業種(キャバレー、ホストクラブ、スナック、パチンコ等)で働くことはできません。
(※酒類提供飲食店の営業は風俗営業には含まれません)
アルバイトの労働時間制限を守らなかった場合、経営者(事業主)は不法就労助長罪として問われた場合、3年以下の懲役または300万以下の罰金に処せられます。(入管法第73条2)
■時間制限がない在留資格
「永住者」「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」「ワーキングホリデー」「特定技能」などは制限がありません。
2.4 外国人労働者の名簿を作成する
深夜営業を行う飲食店において外国人含む全従業員の名簿作成が義務付けられています。
警察署からの立ち入り検査をした際、特に外国人労働者が就労可能かどうかという確認をするため必要となります。
風営法第36条に定められている従業員名簿が必要な飲食店業態は以下の通りです。
- 風俗営業
- 特定遊興飲食店(スポーツバーやライブハウスなど)
- 午後10時以降に営業している飲食店
- 深夜0時~午前6時に営業している飲食店(ファミレスや居酒屋など)
なお、外国人労働者の確認事項として下記の内容が必要となります。店舗経営者または管理者は下記の写しを従業員名簿と一緒に保管しておきましょう。
- 在留カードまたは特別永住者証明書
- 資格外活動許可の記印があるパスポート(資格外活動許可書または就労資格証明書)
警察署から従業員名簿の要求に応えられない、または記載を虚偽した場合には、「100万円以下の罰金」に処される可能性があるので注意しましょう。(風営法53条より)
※従業員名簿の書き方方法等(引用):飲食店の開業手続(従業員名簿)
3.不法就労外国人を雇用しないために

深夜酒類提供飲食店で外国人を採用してしまった後に、外国人が不法労働者だったことを知らなくても罰則が処されるので注意しましょう。
在留カードの就労制限の有無に「就労制限あり」または「就労制限なし」と記載されています。不法就労外国人を採用しないためには、これらの項目に注意を払うことが大切です。
◆外国人の不法就労とは
- 不法に日本へ滞在し、在留期限が切れていながら働く外国人➡不法滞在者となる
- 短期滞在や留学、家族滞在等の外国人で働くことが許可されていない人が働くこと
- 在留資格範囲内で認められたことが超えて働いている(活動)外国人
注)1と2は資格外活動の許可を得ている外国人は不法就労とはならない
◆不法滞在者または不法就労者を雇用しまったら
不法滞在者の場合
在留資格を得ていてもオーバーステイとなっていたら働くことはできません。もし雇用していることに発覚してしまったら、雇用主に対して罰金等が科せられる可能性があります。
そもそも不法滞在者は、退去強制の対象となる人です。
不法就労者
「留学」や「短期滞在」「研修」などで「資格外活動許可」を得ていない外国人が就労させてしまった場合、雇い主に不法就労助長罪に問われる可能性があります。
先述したように、事業主は3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科せられます。
◆不法就労外国人を雇用しないためのポイント
不法就労外国人を雇用してしまった際には、労働者本人だけではなく雇い主にも大きなダメージを受けてしまいます。
下記は不法就労外国人を雇用しないために、面接の段階で身分の確認をチェックしなければなりません。
- 名前と写真、住所➡本人確認
- オーバーステイしていないかの確認
- 就労が可能かどうか(就労不可でも資格外活動許可を得ているか確認する)
- 偽造の在留カードでないかの確認➡必ず現物で確認する(コピーは不可)
さいごに
いかがでしたか。外国人を雇用している深夜酒類提供飲食店は少なくありません。気をつけなければならないことが多々あり、不法就労が判明した場合には、外国人労働者だけではなく雇用主側にも罰則の対象になる可能性が大いにあります。
雇用主としての管理を徹底することをお勧めします。