- 「常連客を注意したら、もう来てくれなくなるのでは?」
- 「スタッフが『嫌だった』と言えば全部カスハラになるのか?」
- 「自分の判断が正しいのか分からない…相談できる人もいない」
このようなお悩みは、実は多くのナイトビジネス経営者が感じています。
ナイトビジネス(バー、キャバクラ、スナック、ラウンジなど)は、接客が中心で「客に気を遣う」ことが当たり前とされてきた業界特有の悩みも多く見られます。
この記事では、ナイトビジネス業界におけるカスハラ対策の必要性・経営者が取るべき対策・トラブル発生時の対応・防止方法を解説していきます。
是非、参考にして下さい。
1.なぜ今、カスハラ対策が必要なのか?

カスハラとは、「カスタマーハラスメント」の略で、お客様からの理不尽なクレームや過激な要求・暴言によって、スタッフに精神的・身体的な負担を強いる行為を指します。
近年、ナイトビジネスの現場で「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻化しています。過度なクレーム、暴言、無理な要求などが日常的に起こり、スタッフの心身に大きな負担をかけています。こうした状況を放置すれば、スタッフの離職やモチベーション低下につながり、結果としてお店のサービス品質や評判にも悪影響を及ぼします。また、カスハラを黙認していると、経営者側の責任が問われるケースもあります。
安心して働ける環境を作ることは、これからの店舗経営において“利益を守る”ことと同じくらい大切です。
今こそ、経営者自身が対策に本気で向き合う必要があります。
2.ナイトビジネスの現場で起きているカスハラの実態

■暴言・威圧的な態度
威圧的な言動は、カスハラのボーダーラインが難しく、見て見ぬふりをされがちですが、経営者が放置すればお店の信用と人材を失うリスクがあります。
- 例①「誰に口きいてんだ、客だぞ?」→少しでも敬語が崩れたり、笑顔が足りないなどの理由で突然怒鳴る
- 例②「こんな接客じゃ金払えないな。どうする?」→支払い拒否をちらつかせてスタッフを委縮させる
- 例③「お前じゃ話にならない、店長出せ」→若い・女性スタッフを見下し、役職者を呼びつける
- 例④「その態度はなんだ!店長に言うからな」→威圧することで自分の思い通りの対応を強要する
- 例⑤「次にきたときは覚えとけよ」→暗に報復をほのめかし、スタッフに恐怖を与える
■過剰なサービス要求
サービスの範囲を超えた行為を客が当然のように求めてくる行動です。
「常連客だし、多少は・・・」と思ってしまいがちですが、トラブル発展する可能性が高いです。
例①営業時間・ルール無視の要求
- 「閉店時間過ぎても飲ませろ」
- 「他の客より優先して席に座らせろ」
- 「今日は指名じゃない子も全員呼んでくれ」
例②スタッフへ私的な要求
- 「連絡先教えて!プライベートで会おうよ」
- 「このあと一緒にご飯行こう」
- 「今日だけでいいから泊まって」
例③支払いに関する理不尽な要求
- 「今日は安くしてよ、常連なんだから」
- 「知り合い連れてきたんだから、何かサービスあるでしょ?」
■セクハラ発言・身体接触
お酒の場だから問題ないとスルーされがちですが、スタッフが不快・不安を感じた時点でハラスメントに該当します。
一度許してしまうと、常習化・エスカレートする危険性があります。
例①外見・身体を品評するような発言
- 「胸大きいね」
- 「肌がきれいだね」
- 「太った?ダイエットしたら?」
例②性的な関係を連想させるような発言
- 「今夜どう?俺、朝まで空いてるよ」
- 「指名料払ってるんだから、一晩付き合ってよ」
例③身体を触る行為
- 髪や顔に触れる
- 腰に手を回す
- 手を握ったまま離さない
- 帰り際にハグを強要する
- 顔や体を異常に近づける
- 拒否しても離れようとしない
3.ナイトビジネスにおけるカスハラの判断基準

カスハラ(カスタマーハラスメント)の判断基準は、「その言動が正当な苦情ではなく、スタッフを傷つけたり困らせたりする行為かどうか」です。
具体的には、怒鳴る、暴言を吐く、長時間クレームを続ける、無理な要求をする、人格を否定するなどがあればカスハラと判断できます。
スタッフが「怖い」「つらい」と感じた時点でハラスメントの可能性が高く、冗談や酔っていたでは済まされません。感情的で一方的な言動はNGです。
以下、カスハラと判断できる基準チェックリストです。
1つでも該当したら、カスハラの可能性が非常に高いでしょう。
言動に関するカスハラ基準
- □ 理由なく怒鳴ったり、威圧的な態度を取る
- □ スタッフの人格や外見を否定する発言をした(例:「使えねえ」「ブス」)
- □ 店舗のサービスとは関係のないプライベートに踏み込む質問を繰り返す
- □ 「土下座しろ」「辞めろ」など、行き過ぎた謝罪や行動を強要する
- □ サービス提供後に無理な値引きや無料対応を強く要求する
態度に関するカスハラ基準
- □ 明らかに感情的・一方的で、話し合いができない状態になっている
- □ 過剰な要求や長時間の拘束がある(例:30分以上クレーム対応に拘束)
- □ 店やスタッフのSNSを特定し、悪評を拡散すると脅してきた
- □ 他の客やスタッフの前で執拗に責める
スタッフ側の感情・被害感に関するカスハラ基準
- □ 「怖い」「傷ついた」「もう接客したくない」と感じた
- □ 同じ客に対して、複数のスタッフがストレスを感じている
- □ このままでは退職したくなる/出勤したくないと思った
4.経営者が取るべき5つのカスハラ対策
経営者が取るべきカスハラ対策は、“その場しのぎの対応”ではなく、「お店としてどのような方針で運営していくか」を明確にすることが重要です。
以下に、現場の信頼を守りながら、経営を安定させるための実践的な対策をまとめました。
対策①事前にお客様に伝える仕組みをつくる
- 店内・メニュー・WEBなどに「迷惑行為お断り」「スタッフの安全を最優先します」などの文言を掲示する
- サービスの範囲や禁止事項を明確にして、ルールや規約を作る
対策②スタッフの教育と対応マニュアルを作成する
- 「これはカスハラ」「これは通常クレーム」の基準を共有
- トラブル時の対応フロー(報告・対応・記録)をマニュアル化
- 「嫌なことは断っていい」「無理はしなくていい」という安心感を伝える
対策③初動対応の徹底と経営者の対応
- クレーム・威圧行為が発生したら即時報告 → 責任者(経営者や店長)が対応
- 「スタッフに無理をさせない」「必要なら退店を求める」姿勢を明示
- 対応内容を記録(日時・発言・対応)として残す
対策④スタッフの心のケアと相談窓口の設置
- 定期的なヒアリングや1on1ミーティングを実施
- 匿名でも相談できる仕組み(LINE・ノートなど)を作る
- カスハラを我慢させない職場文化をつくる
対策⑤防犯設備と法的連携も視野に入れる
- 防犯カメラ・音声録音・通報ボタンの設置
- 顧問弁護士や外部労務アドバイザーとの連携
- 「警察対応も辞さない」という意志を示すことで抑止力になる
さいごに
いかがでしたか?ナイトビジネスにおけるカスハラ対策は、経営者の意識と行動がカギです。
「お客様は神様」という考えに縛られず、スタッフを守るルールを明確にし、対応マニュアルや相談体制を整えることが重要です。
安心して働ける環境づくりが、結果的に店の信頼や売上を守ることにつながります。